デンマーク家具を巡る旅10
「スパニッシュチェアの話」
名門 FREDERICIAを訪ねて①
Model2226 The Spanish Chairの話
万寿実で扱うデンマーク家具のもう一つの代表作、The Spanish Chair。
そのスパニッシュチェアを作るフレデリシア社の本社工場を訪れた。
「Fredericia Furniture(フレデリシア ファーニチャー)」
50年以上に渡りデンマークのクラシック家具を製造してきたフレデリシア。
今では伝統的な家具から現代のモダンな家具まで手掛けている。
そのコレクションはボーエ・モーエンセンやハンス・J・ウェグナーといった
巨匠の作品から新鋭デザイナーの作品まで幅広く取り扱っている。
フレデリシア本社前で。
個人的に今回の旅の中で好きな写真です。
Borge Mogensen
ボーエ・モーエンセン 1914-1972
20歳で家具マイスターの資格を得て、
コーレ・クリントを師事し彼の元で働いた後、
協同組合家具開発担当者としてのキャリアをスタートさせた。
盟友ウェグナーと共に、デンマーク家具デザインにおける代表的なデザイナーだ。
”シンプルかつ実用的な家具を、リーズナブルな価格で提供すること”を信念に掲げ、
大衆視点のデザイン、不必要な部分には高級材を
使わず機能美を追求した作品を数多く残している。
フレデリシアは創業時から、彼の丈夫で長持ちすることで
定評のあるチェアを中心に制作し続けている。
人となりを記憶する椅子 Model2226 The Spanish Chair
「使えば使うほど、自分に近づく」
by Borge Mogensen
モーエンセンの自邸のためにデザインされ、竣工の翌年の1959年に発表された。
スペインの貴族が使っていた一枚の革の椅子がモデルと言われることからこの名が付けられた。
モーエンセンの書斎スパニッシュチェア。
実際に本人が座っていたもので、本人が吸ったであろう
煙草の灰の跡や飲み物をこぼした跡などが残っている。
今も本人がそこにいるかのように椅子が人となりを記憶している。
デンマーク産のオーク材を使ってフレームは作られる。
木目の平行な部分のみしか使用せず、
左右の幅広のアームは一枚の板から採られ
ちょっとしたティーテーブル代わりにも使える。
サドルレザーの牛革を贅沢に一枚使用している。
天然の植物から抽出されるタンニン(木の樹皮などの渋)でなめした最高品質の本ヌメ革だ。
革本来の風合いにこだわりを持つ職人たちによる手間を惜しまない伝統的な製造工程を経て、
一枚一枚作り上げた上質なモノを使用している。
近年傷のない一枚革が非常に貴重なものとなっている。
人となりを記憶する椅子。
お客様の元へお届けしたスパニッシュチェアも使えば使うほど、
お客様色に育っていく。
「私のスパニッシュチェアも早くこうなってほしいなー」と
モーエンセンの使ったスパニッシュチェアを見ながら
以前お買い上げ頂いたお客様が先日ご来店された際におっしゃっていました。
日々座り、手入れをすることで月日と共に
あなたの人となりを記憶してくれる、そんな椅子です。
デンマーク家具を巡る旅11 「2213ソファの話」へ続く