デンマーク家具を巡る旅4
「自然と共生し続けるPPモブラー」
PP Mobler 名作を今も作り続けるクラフトマン集団を訪ねて②
自然との共生
私たちが感じたPPモブラーが他のメーカーと一番違うところ。それは森への敬意。
PPモブラーで使用される木材は、樹齢100年以上かつデンマークとドイツの持続可能な森林から採っている。
「最低限、樹齢と同じ年数使えるように」と作られる家具への情熱は森にも向けられ、
PPモブラーは木を切らずに”根っこから抜き取る”。
切株を残すと新たな木は育たないが、木を根っこから抜き取ることで新しい木が育つ環境を作る。
単に木を切り倒すのと比べるとコストは莫大だが、環境に配慮し木と仕事をし続けていくために
彼らが頑なに守る倫理基盤だ。
PPモブラーの材料のこだわりはこれだけではない。
世界中で使われるPPモブラーの家具はどんな環境で使っても気が狂わないよう、
材料の含水率(木の乾燥度合の指標)を6%台にまで乾燥させる。
日本の多くの家具メーカーは大体8%台。たった2%だが、8%より6週間以上、乾燥時間を余分に要し
この差でロスする部材は倍になる。
しかし、木の反りやひねりが極めて起りづらい状態で使って欲しいと願う気持ちの表れだ。
<機械を操作し木部をカットする職人さん>
以前のPPモブラーの木部の加工は手作業が主だったが、今では最新のコンピューター制御の工作機械が導入されている。
しかしPPモブラーの機械の導入は単なる効率化の為ではない。
「ウェグナーが設計した当時は工程が複雑かつ多すぎて製品化できなかったものが、機械のおかげで製品にできたんだ。
それと精度を上げるには機械で出来ることは機械に任せた方がいい。」とソーレンさんは言う。
<それぞれのチェアの部品で使われるさまざまな専用刃物>
機械はPPモブラー独自で開発したものや、プログラミングを習得した職人が既製の工作機械にアレンジを加えたものを使用している。
もちろん、機械が出来ない部分は職人による手加工で行われる。
さらにソーレンさんは「PPモブラーの職人には、伝統的な技術と新しい技術の両方が必要とされ、
職人は決してテクノロジーの一部になってはならない。テクノロジーは製品とより良くするとの信念を持っているが、
それを使うのは木を知り尽くした職人なんだ」と重ねてソーレンさんは言った。
PPモブラーの製作した機械の例として、サークルチェアがあげられる。
チェアの湾曲した構造は家具職人であるソーアン・ホスト・ペダーセンとヘンリー・フィスカーが
円形を作り出す特別な機会を開発したことで、ウェグナー自身が木材では不可能であると思っていたことを可能にした。
現在万寿実で展示中の円形でできたイージーチェア。
上がサークルチェアで下がピーコックチェア。
サークルチェアはどこがつなぎ目か分からないほど。
どちらも木でここまで曲げて大丈夫かと思うほど滑らかな曲線です。
ちなみに現在放送中の滝川クリステルさん出演の化粧水(たしか)のCMでちらっと映っているのがサークルチェアです。
ご覧あれ。
デンマーク家具を巡る旅5 「ベアチェアの話」へ続く